【毒性の心得】貝毒

【毒性の心得】とは?

この世には毒をもった食べ物が多くあります。その種類はよく知られているものから、あまり知られていないものまで様々ですがあなたはちゃんと正しい知識を持っていますか?この記事では「貝毒」について知ってもらい、安全に貝を味わってもらおうと思います。

近づいてはいけない毒貝「イモガイ

まず抑えておいて欲しいのは貝には毒があるということです。しかし、ほとんどの貝は相手を攻撃するといったことはしません。プランクトンを餌にしているということが多く、毒針を使って攻撃を行う必要がないからです。一方で「イモガイ」の仲間には絶対に近づいてはいけません。夜行性で大きさは10~20cm前後ですが、この貝の類には人を殺すことのできるほどの毒があり、攻撃をするための毒針まで持ち合わせている「殺人貝」です。

関東から沖縄にかけて、特に沖縄で見られますが、気候次第では他の地域でも見られるかもしれません。また、人目につく場所にいることが多いです。では画像を見てください。

イモガイアンボイナガイ

イモガイと呼ばれる貝類とそのなかでも最も強力な毒を持つと言われている「アンボイナ貝」です。このようにイモガイはカラフルな貝殻を持っているので比較的見分けやすいのですが、できれば毒を持つ生物は200%位で見分けてもらいたいのでGOOGLEの画像検索から色々と見てもらうのをおすすめします。

毒の強さと治療法(対処法)

一部のイモガイ類の毒は人間の致死量に達し、毒針はゴム長靴やウェットスーツすらも貫通します。イモガイ類の毒はコノトキシンと呼ばれる神経毒であり、刺された直後は痛みを感じないので、子供や大人ですら気付かずに毒に侵されてしまう可能性が十分にあります。

コノトキシンはイモガイ類が作り出す神経毒で、研究は進められていますが現在(2018年2月)は血清など毒を治療できる薬がないため、死亡率が高いです。強力な鎮静薬としても期待されており、末期癌の患者への適用などの研究も進められています。

研究は進められていますが血清は未だ開発されておらず、生命維持装置により患者を生かし、患者が毒素に打ち勝つのを祈るしかないという状況になっています。

気付けない可能性が高いですが、刺された疑いがあるときは動けなくなる前に陸に上がり、刺された箇所が分かる場合は、口で毒を吸い出して、そこから心臓に近い場所をタオルやヒモで縛り、安静にしつつすぐに病院に向かってください。

イモガイに似た仲間

はい、「えっ、さっきの毒貝うちでは食ってるけど?」というドクドクの実を食べたあなた。あなたが食べているのは恐らく似た仲間の「マガキ貝」です。地方によっては色々な呼び方をされる事も多いです。この貝は無毒(正確にはこの後述べる「汚染されている」可能性はありますが・・・)なので普通に食べられることができます。画像を見てください。

マガキ貝

これがマガキ貝です。「おいおいおい、さっきの毒貝と同じじゃねーか」と思ったんじゃないですか?同じです。違います。主に下の画像の部分が違います。

マガキガイ 拡大アンボイナガイ 拡大

 

いやね、もうほんと分かるわけないんですよ・・・でこぼこしていなくつるっとしているのがアンボイナ貝(毒貝)、少し欠けているようになっているものがマガキ貝(無毒)です。しかし、水流や岩にぶつかるなどその部分だけ欠ける可能性はいくらでも存在し、素人目で判断するのは不可能です。なので潮干狩りではマガキ貝を採ろうとすることはもちろん、色鮮やかな貝に近づくことさえもやめておいたほうがいいでしょう。

食べたい場合は信用できるお店で「マガキ貝」としっかり表示されているものを買ってください。マガキ貝、アンボイナ貝ともに加熱すれば食中毒にはなりません。親子連れで潮干狩りに行くときなど、特に子供は綺麗なものに引かれやすいので目を離さないでください

貝毒の種類

先ほどは毒針を持ち攻撃してくる毒貝である「イモガイ」を紹介しましたが、次は体内に毒は持つものの、攻撃はしてこない貝類の毒、貝によって引き起こされやすい症状などを紹介します。

攻撃してこない貝類の毒は大きく2種類に分けることができます。「もともと毒を持っている貝」と「餌により毒が蓄積された貝」で、多くの貝類は後者のケースです。これらの毒は5種類ほどに分類できます。先に蓄積される毒について見て行きましょう。(毒は熱してもなくなりません

下痢性貝毒

カラス貝渦鞭毛藻と呼ばれる微生物が毒を溜め込み、それを貝が食べることにより徐々に貝が毒化されていきます。アサリやカキなどほぼ全ての2枚貝が毒化する可能性があり、毒は中腸腺に蓄積されます。毒化された貝を食べると激しい下痢や吐き気、嘔吐などを引き起こしますが命に関わることはないでしょう。それらの症状は食後30分頃から現れ始め、通常3日以内に回復します。特にムラサキイガイが毒性が高いです。

ムラサキイガイは岸壁などに張り付いている紫色の平べったい貝のことです。対策としては症状がよく似たアザスピロ酸による貝毒も同じ対策で大丈夫です。

 

【対策】

  • 汚い場所のムラサキイガイを食べない。
  • 自分が行く海の有毒プランクトン発生状況を知っておく。
  • 二枚貝の中腸腺を食べない。
  • 症状が現れ始めたら安静にして十分な水分補給を行う。

麻痺性貝毒

渦鞭毛藻と呼ばれる微生物が毒を溜め込み、それを貝が食べることにより徐々に貝が毒化されていきます。一度麻痺性貝毒を持つ微生物が現れた地域ではその地域の全ての動物が毒化される可能性を持ちます。多くの貝の場合、毒は中腸腺に蓄積されます。キンシバイ(巻貝)の場合は筋肉も毒化されることが確認済みです。

毒化された貝を食べると食後30分ほどで軽い麻痺が始まり、重症の場合死に至ります。フグ毒中毒とほぼ同じですね。人工呼吸により酸素を確保して、適切な手当てを行えば確実に延命することができますが、治療薬などはありません

 

【対策】

  • 自分が行く海の有毒プランクトン発生状況を知っておく。
  • 貝の中腸腺を食べない。
  • 症状が現れ始めても無理に吐かせない。
  • 症状が現れ始めたら人工呼吸を行い、延命を試みる。

神経性貝毒

この毒は2枚貝類で問題になることが多いです。渦鞭毛藻により毒が発生し、その地域に住む全ての動物が毒化される可能性があります。症状としては食後1時間ほどから口内の痺れなどの神経障害から腹痛などの胃腸障害とありますが、死亡例はありません。2~3日で回復します。上の2つの種類の中毒例が多く、この中毒症状は珍しいものになります。治療薬などは現在ありません。

 

【対策】

  • 自分が行く海の有毒プランクトン発生状況を知っておく。
  • 症状が現れ始めたら安静にして十分に水分を補給する。

記憶喪失性貝毒

この毒は他の貝毒とは違い、珪藻が有毒化することで発生します。貝毒が発生した地域の全ての動物が毒化の危険を持ち、食後数時間以内に症状が現れ始めて吐気や嘔吐、重症の場合は記憶喪失や昏睡により死亡するケースもあります。主にムラサキイガイによる「ドウモイ酸」が発生原因となっています。

 

【対策】

  • 汚い場所のムラサキイガイを食べない。
  • 赤潮が発生してる場合には潮干狩りに行かない。
  • 自分が行く海の有毒プランクトン発生状況を知っておく。
  • 症状が現れ始めたら安静にして十分に水分を補給する。

 

 

次にもともと毒をもっている貝類の紹介です。

唾液腺毒

ツブ貝バイ貝の「唾液腺」と呼ばれる器官にある毒を食べることで発症します。食後30分程で発症し、激しい頭痛や酔ったような症状になることが特徴です。 数時間で回復し、死亡することはありません。他の巻貝と間違った区別をしてしまう可能性があるため、巻貝は全て唾液腺を取り除くほうがいいと思います。

 

【対策】

  • 巻貝の唾液腺を正しく取り除く。
  • 症状が現れ始めたら安静にして十分に水分を補給する。

巻貝の唾液腺の取り除き方はこちらの記事の目次から「巻貝の唾液腺(毒器官)の取り除き方」に飛んでください。

光過敏症

これはアワビやサザエでも微量に持つピロフォルバイドaと呼ばれる物質によって引き起こされる症状です。2月から5月の春先のアワビやサザエの中腸腺が有毒になります。中毒が発生するのは非常に稀なことで、発症したかどうかは日光に当たってみないと分かりません。食後1日から体が発赤、はれが起こり、完治するのには20日程かかります。無毒なアワビの中腸腺の色は灰緑色から緑褐色ですが、有毒な場合は濃緑黒色をしています。

 

【対策】

  • 春先のアワビやサザエの中腸腺は取り除く。
  • 春先でなくてもアワビの中腸腺の色が濃緑黒色をしている場合には注意する。
  • 発症した場合にはできる限り日光に当たらないようにしてください。

アワビの下処理(肝の外し方)

雄のアワビの内臓(中腸腺は白く、雌のアワビの内臓は緑色をしています。

  1. アワビの汚れをタワシか塩で軽くもみ洗いして白色になるまで落とします。
  2. スプーンや小型ナイフで貝柱を殻から取り外します。
  3. 殻から外したら内臓の部分を上にしてアワビの下(口)を三角にカットします。
  4. 内臓(中腸腺を取り外して、写真右上の袋のような部分は切り離してください。

アワビ 口アワビ 内臓

画像はどちらも「わんLove」様のレシピから使わせていただきました。

フグ毒

僕も勉強し始めの頃は「は?フグ??巻貝・・・」と思いました。少し解説しましょう。まず、フグ毒の原因となる物質が「テトロドトキシン」であるということはどこかで聞いたことがあると思います。実はこのテトロドトキシン、フグ固有の毒ではなく、タコや貝や蟹なども同じ毒を持つものがいます。特に有名なフグの学名(Tetraodontidae)と毒(toxin)がくっついてテトロドトキシン(Tetrodotoxin)となりました。

なので、フグ毒(テトロドトキシン)をもつ貝や、フグ毒をもつタコ、フグ毒をもつフグなどと言える訳です。ややこしいですね。症状は全て同じで、この毒を持つ貝を食べるだけで食後20分程から軽い痺れなどが起こり、重症の場合には死に至ります。人工呼吸により酸素を確保して、適切な手当てを行えば確実に延命することができますが、治療薬などはありません。麻痺性貝毒と症状がほぼ同じなので同じものとして扱われることもあります。

 

【対策】

  • フグ毒を持つ貝(後述)を知っておき、その貝を食べない。
  • 素人目で判断しない。
  • 症状が現れ始めても無理に吐かせない。
  • 症状が現れ始めたら人工呼吸を行い、延命を試みる。

フグ毒をもつ貝

ここからはフグ毒(テトロドトキシン)を持つ貝類を紹介します。これから紹介する貝類は知識なく食べないでください。また、以下の画像は全て厚生労働省からお借りしました。

キンシバイ貝

キンシバイ貝4cm前後のすべすべした淡褐色の殻を持ち、殻には横に10本ほど線が入っています。毒性は高く、筋肉(身)と内臓にともにフグ毒を持っているので食べられる部分はありません絶対に食べないでください

バイ貝

バイ貝6~7cm前後の厚くてすべすべした殻を持ち、白色に褐色が散らばったような外見をしています。古いものになると模様が見えなくなり、殻の内側は薄い青色をしています。内臓(中腸腺)に毒を蓄積していて、内蔵を取り除けば毒もそれほど強くないので食べることはできます

アラレ貝

アラレ貝2~2.5cmほどの丸くて膨らんだ殻を持ち、貝殻の上の層に行くほど下の層の貝殻に包まれているような構造になっています(N型)。殻の蓋は大きく、全体的に淡褐色をしています。微毒ですが、食べられる部分はありません

ハナムシロ貝

ハナムシロ貝3~4cmほどの縦に細かく溝が入った殻を持ちます。画像のものは黒いですが、淡褐色や白色をしているものなどもあります。微毒ですが、食べられる部分はありません

ボウシュウボラ貝

ボウシュウボラ貝ホラ貝は楽器として使われることもある大きな貝です。20~24cmほどの大きな殻を持ち、分厚くて強い褐色をしています。一方その身は黄色か赤色をしています。毒性は非常に高いですが、中腸腺を取り除けば食べることはできます。しかし、素人が調理するのはやめましょう

オオナルトボラ貝

オオナルトボラ貝こちらもホラ貝ですが、14~20cmとボウシュウボラ貝より少し小さい殻を持っています。殻には鋭い棘が付いていて、全体的にごつごつしています。蓋のある部分は白い色をしてます。毒性は非常に高いですが、中腸腺を取り除けば食べることはできます。しかし、素人が調理するのはやめましょう

貝毒とノロウイル

貝毒とノロウイルスの違い、ちゃんと区別できていますか?冬にインフルエンザなどとともに流行るのがノロウイルス、どんな時期でも当たる可能性があるのが貝毒という認識で基本的には大丈夫です。少しだけ掘り下げたいと思います。

まず、貝毒の原因となるのが蓄積されたり、あらかじめ貝が持っていたりする毒であるのに対して、ノロウイルスはその原因がウイルスにあります。貝がノロウイルスで有名なのは私たちの廃棄物が海に流され、貝がそれらのウイルスの影響を受けやすいからです。

症状としては下痢性貝毒の症状とよく似ていて、食後1日から激しい吐気や下痢を引き起こします。貝毒と違う点は非常に二次感染を起こしやすいという点にあります。しかし、貝毒とは違い85~90℃で90秒以上加熱すればウイルスは死滅するといわれています。

 

【対策】

  • 体調の悪いときに生ものを食べるのを控える。
  • 加熱は85~90℃で90秒間以上する。
  • 生ものを触った手などで他の食品を触らない。
  • ノロウイルスは冬だけでなく年中発生する危険性があります。
  • 何度も感染する可能性があるので手洗いうがいを心がける。
  • 症状が現れ始めたら、できる限り水分を補給するようにする。

まとめ

【毒性の心得】では「時間がない人のためのまとめ」はやりません。この記事ではできる限り素人にも分かりやすいように簡潔にしましたが、研究によって内容が変わることがありえます。この記事でほぼ全ての内容は話したつもりですが、毒は人の命に関わることもあるのであなた自身で僕の記事でも疑ってかかるという姿勢が大切だと思います。

この記事は2018年3/9日に書かれました。


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